最終更新:2025/08/12

FXと株の確定申告は必要?特定口座・源泉徴収・損失の税金を解説【質問も対応】

FXの「源泉徴収あり」とは?仕組みと特定口座との関係

FXに関する税金の話題で、「源泉徴収あり」という言葉を見かけることがあります。これは株式や投資信託などで広く使われている制度で、年間の損益に応じて税金が自動で引かれる仕組みです。

ただし、FXではこの制度の適用が異なり、注意が必要です。まずは、源泉徴収の基本と特定口座の種類について整理しておきましょう。

源泉徴収とは何か?

源泉徴収とは、所得や利益が出たタイミングで、支払者が税金をあらかじめ差し引いて国に納める制度のことで、課税対象となる取引に対して適用されます。たとえば給与所得では、会社が給料からあっという間に税金を自動的に差し引いて納付してくれるため、従業員が自分で納税手続きをする必要は基本的にありません。

株式や投資信託などでは、この制度を利用できる「特定口座(源泉徴収あり)」が用意されており、売却益や配当金などにかかる税金が自動で差し引かれるため、確定申告が不要になるケースが多いです。ただし、医療費控除や住宅ローン控除などの控除を受けたい場合には、特定口座を利用していても確定申告が必要になることがあります。

たとえば、10万円を超える医療費控除や、住宅ローン控除の初年度などを適用したい場合には、源泉徴収されていたとしても自分で確定申告を行う必要があります。

また、給与所得者が副業などで得た20万円以下の副収入については、所得税に関して確定申告が不要とされる特例があります(年末調整済みであることが条件)。ただし、住民税の申告は必要になることがあるため、事前に確認しておくことが大切です。

源泉徴収制度は、税制に詳しくない個人でもスムーズに取引や納税ができる仕組みとして、初心者向けに紹介されることも多く、各証券会社や国税庁のウェブサイトでも詳細な案内があります。制度を正しく理解し、自分に合った方法を選ぶことが重要です。

特定口座の種類と選べるパターン

FXと株式の各種口座制度には、仕組みや税務処理の面で大きな違いがあります。住民税や所得税に関わる制度や、源泉徴収の有無は確定申告の要否に直結するため、正確な情報を把握しておくことが重要です。以下の表では、代表的な違いをまとめています。

株式では、証券会社が提供する年間取引報告書などの情報をもとに、税務処理が自動化されているケースが多く、特定口座(源泉徴収あり)を選べば、確定申告が不要になる場合があります。ただし、住宅ローン控除の初年度や10万円を超える医療費控除などを利用する場合には、申告が必要になります。

FXには「源泉徴収あり」の仕組みはなく、雑所得として自分で計算・申告する必要があります。FX取引は「先物取引に係る雑所得等」として、申告分離課税(税率20.315%)が適用されます。

さらに、iDeCoなどの他の税制優遇制度と併用したい場合には、申告を通じた正確な整理が必要です。それぞれの制度を正しく理解し、自身の投資スタイルや控除の有無に応じて適切に対応することが重要です。最新の税制や制度変更については、国税庁の情報や証券会社・FX会社のウェブサイトを確認しましょう。

FXで「源泉徴収ありの口座」は選べるのか?

株式や投資信託では、特定口座の「源泉徴収あり」を選択すれば、税金が自動で差し引かれ、確定申告の手間を省くことができます。それでは、FX取引でも同様に「源泉徴収ありの口座」を利用できるのでしょうか?

実はFXと株式では制度そのものに違いがあり、税務処理の仕組みも大きく異なります。ここではその違いと、実際の業者対応について確認していきましょう。

FXと株式の口座制度の違い

FXと株式の各種口座制度には、仕組みや税務処理の面で大きな違いがあります。住民税や所得税に関わる制度や、源泉徴収の有無は確定申告の要否に直結するため、正確な情報を把握しておくことが重要です。以下の表では、代表的な違いをまとめています。

比較項目 株式(特定口座) FX(店頭取引など)
口座の種類 特定口座/一般口座(NISA対応あり) 一般口座のみ
源泉徴収ありの選択 選択可能(申告不要も可) 選択不可
税金の計算・納付 証券会社が自動計算・納付(源泉徴収ありの場合) 自分で計算し、確定申告で納付
所得区分 譲渡所得(申告分離課税) 雑所得(先物取引に係る申告分離課税)
確定申告の必要性 原則不要(条件による) 原則として必要

株式では、証券会社が提供する年間取引報告書などの情報をもとに、税務処理が自動化されているケースが多く、特定口座(源泉徴収あり)を選べば、確定申告が不要になる場合があります。ただし、住宅ローン控除の初年度や10万円を超える医療費控除などを利用する場合には、申告が必要になります。

FXには「源泉徴収あり」の仕組みはなく、雑所得として自分で計算・申告する必要があります。FX取引は「先物取引に係る雑所得等」として、申告分離課税(税率20.315%)が適用されます。

それぞれの制度を正しく理解し、自身の投資スタイルや控除の有無に応じて適切に対応することが重要です。最新の税制や制度変更については、国税庁の情報や証券会社・FX会社のウェブサイトを確認しましょう。

源泉徴収に対応している業者の有無 

現在、日本国内の主要なFX業者が提供する口座では、「源泉徴収あり」の制度には対応していません。FX取引の利益は「雑所得」に分類され、「申告分離課税」の対象であるため、株式のような源泉徴収制度は適用されません。そのため、トレーダー自身が年間の損益を計算し、収入や課税対象となる金額に基づいて、確定申告に必要な手続きを行う必要があります。

大手証券会社がFX口座を併設している場合でも、特定口座の制度は利用できず、ログイン後の管理画面で確認できるのは、損益や証拠金などの基本的な情報に限られます。たとえば、1月1日から12月31日までの取引履歴を正確に記録し、確定申告に備えることが求められます。

現時点では、制度の見直しに関する公的な発表は確認されておらず、今後も自己申告が前提となる見通しです。過去の変更履歴を見る限り、2023年以降も大きな制度変更は行われていません。

不明点がある場合は、業者の公式サイトのトップページや「よくある質問(FAQ)」、無料のサポート窓口などを活用し、必要に応じて検索機能を使って情報を収集しましょう。

源泉徴収あり・なしの違いと確定申告への影響

FXや株式取引での「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」は、税金の処理方法や申告の手間に大きく関わってきます。確定申告が必要かどうかや、税務上の負担の違いは、初心者にとって重要なポイントです。

ここでは、それぞれの違いを整理しながら、確定申告にどのような影響があるのかを解説します。

税務処理と手間の違い

源泉徴収ありの特定口座では、証券会社が税金を自動で計算・納付してくれるサービスがあり、申告分離課税が適用される株取引では、確定申告が不要となるケースもあります。

FXでは自分で損益を計算し、所得税や住民税を申告・納付する必要があります。情報の記載ミスによるリスクもあるため、正確な対応が求められます。

項目 源泉徴収あり FX(源泉徴収なし)
税計算 自動 自分で行う
納税 自動で天引き 自分で納付
確定申告 原則不要 原則必要
ミスのリスク 少ない 高め

税務処理の自動化は便利ですが、投資額が少額とは限らず、50万円や100万円といった取引規模でも慎重な確認が必要です。手間やコストにかかる負担を比較し、自分に合う方法を選びましょう。

「確定申告が不要になる」ケースと注意点

特定口座(源泉徴収あり)を利用した株式取引では、以下の条件をすべて満たす場合、確定申告が不要になることがあります。

【申告不要となる主なケース】

  • 給与所得が2,000万円以下である
  • 譲渡益が特定口座(源泉徴収あり)内の取引に限定されている
  • 損益通算や医療費控除以外の各種控除を利用しない

【注意点】

  • FXや先物取引などは対象外(源泉徴収制度がなく、申告分離課税の対象となるため、利益が出た場合は原則として申告が必要)
  • 医療費控除や配偶者控除など、合計所得に関連する申告は必要
  • 誤解や放置によって申告漏れがあると、追徴課税などのペナルティを受ける可能性がある

iDeCoやETFなど、税制優遇制度を利用している場合も、申告の有無を含めて注意が必要です。お客様の状況や目的に応じて、不要と思われる場面でも確認を怠らないようにしましょう。

「損失が出たとき」は源泉徴収ありでも申告すべき?

利益が出たときだけでなく、損失が出た場合にも確定申告が関係してきます。源泉徴収ありの口座を利用している場合でも、申告を行うことで将来的に節税につながるケースがあります。

ここでは、「損失が出た年に申告すべき理由」と、「源泉徴収ありでも損をする可能性がある場面」について整理します。

損益通算と繰越控除の基本

投資による損失は、損益通算や繰越控除を活用することで、税金の負担を抑える効果があります。たとえば、株式の損失は、同じ所得区分(申告分離課税)の利益と相殺することで、所得税や住民税を減らすことが可能です。FXでの損失も、同じくFXの利益と損益通算ができます。

ただし、損益通算の適用にはいくつかの条件があります。まず、FXのような申告分離課税対象の所得であっても、課税対象となる損益を正しく把握し、証券会社が提供する損益一覧や年間取引報告書などを活用して、申告に必要な収入や損失のデータの整理を行って準備しましょう。

相殺しきれなかった損失は、繰越控除により最大3年間繰り越しが可能です。たとえば30万円の損失を翌年の利益と相殺する場合などは特に有効です。繰越控除を適用するには、毎年確定申告が必要で、たとえ0円申告でも手続きを継続することが条件です。

これらの制度を活用するには、自分の状況に該当するかどうかを確認する必要があります。税務署のホームページや専門家によるセミナーなどで得られる概要を参考にしながら、制度との関わりを意識した対応が重要です。検索を通じて情報を集め、損失処理の選び方を誤らないようにしましょう。

源泉徴収ありだと損する場合 

源泉徴収ありの口座では、利益が出ると税金が自動的に引かれますが、損失の申告や控除は自動で行われません。別の口座での損失や、翌年以降に発生した利益と損失を通算する場合でも、自分で申告を行わなければ損益通算ができず、結果的に税金を過払いしてしまう可能性があります。

申告不要と思い込んで損失の申告を見逃してしまうケースも少なくありませんが、実際には税金の還付や各種控除の適用など、有利な制度を活用できる場合もあります。たとえば400万円の取引で大きく損失が出た場合など、手続きを怠れば損失を補填できないまま納税義務が発生するリスクもあります。

こうした制度の盲点は、そのものがシンプルに見える反面、運用次第で差が生じることがあるという点です。損失が出た年こそ、確定申告が重要であることを正しく理解しておきましょう。

源泉徴収ありが向いている人・向いていない人

源泉徴収ありの制度は便利ですが、すべての投資家にとってぴったり合う方法とは限りません。人によっては申告の手間を省ける一方で、この制度を利用しないほうが有利になる場合もあります。

ここでは、どのような人に源泉徴収ありが向いているのか、逆に適さないのはどのようなケースかを具体的に見ていきましょう。

向いているのは「副業・会社員」

副業トレーダーや会社員向けに設計された特定口座(源泉徴収あり)は、非常に便利な仕組みです。税金が自動的に差し引かれるため、確定申告が不要となる制度を利用すれば、税務処理の手間や住民税の申告漏れといったリスクも抑えやすくなります。

投資額が少額で、損益通算や控除の適用が不要な人にとっては、ミスの防止や作業の軽減といったメリットが大きく、時間に余裕のない社会人にも向いている制度と言えるでしょう。パソコン操作が苦手な人でも制度を利用しやすく、シンプルな運用が可能です。

向かないのは「損失が出やすい取引をする人」 

短期売買や価格変動が大きい銘柄・オプション取引・先物取引を中心にする人には、源泉徴収ありの口座は不向きです。損失が出ても自動控除はされず、申告を行わないと税金を払いすぎるリスクがあります。

また、複数口座を利用する場合や繰越控除を希望する場合は、源泉徴収なしの口座の方が柔軟です。所得税や住民税の負担調整を行うには、確定申告が前提となるため、自身の取引スタイルに合った制度を選ぶ必要があります。

確定申告の基本的なやり方と使えるサポートツール

FX取引で得た利益や損失は、原則として確定申告が必要です。しかし、初めて申告を行う方にとっては、どの書類を用意し、どのような流れで提出すればよいのか分かりづらいものです。

ここでは、確定申告の基本的な手順と活用できるサポートツールについて分かりやすく解説します。

必要な書類と提出フロー

確定申告には、「年間取引報告書」「取引履歴」「領収書」など、FX業者から発行される書類が必要です。これらは所得税や住民税の計算に関わるため、正確に記載・保管しておくことが求められます。

申告の提出フローは以下のとおりです。

  1. 必要な書類を収集・整理する
  2. 所得、手数料、合計金額などを集計する
  3. e-Tax(パソコン)や国税庁の公式サイトから申告書を作成する
  4. 翌年の3月15日までに提出する(郵送・窓口持参も可)

申告内容に誤りがあると、追徴課税の対象になる可能性があるため、早めの準備を心がけましょう。

会計ソフト・税理士の活用法 

確定申告に不安がある人や、取引量が多く集計が煩雑な場合は、会計ソフトや税理士によるサポートを活用することで、手続きがスムーズになります。近年は「freee」や「弥生」などのクラウド型会計ソフトが人気で、FX専用のフォーマットやCSV取込機能を備えたサービスも多く、申告に慣れていない初心者でも使いやすい設計になっています。

無料プランで利用できるソフトもあり、基本的な帳簿付けや計算機能を試すことができます。使い方の説明も豊富に用意されており、ヘルプページやチャットによる相談機能など、サポート体制も充実しています。

また、税理士に依頼すれば、節税対策や法的リスクへの備えとしても有効です。費用はかかりますが、損益が大きい年や申告が初めての年などは、専門家に任せることで安心感を得られるでしょう。

まとめ:自分に合った税制選びでFX取引をスムーズに

源泉徴収あり・なしの制度は、取引スタイルや税務対応に大きく影響します。どちらを選ぶべきか迷った場合は、それぞれの制度の違いと自分の状況を照らし合わせて判断することが大切です。

ここでは、本記事の内容を振り返りながら、読者が適切な対応を取るためのポイントを整理します。

源泉徴収あり・なしの違いを理解して判断しよう

源泉徴収ありの特定口座では、利益が出たタイミングで証券会社が所得税や住民税を自動で計算・徴収してくれるため、確定申告の手間がかからず、申告なしで完結する場合もあります。この制度は、株式や投資信託など申告分離課税が適用される金融商品に広く対応しており、特定口座(源泉徴収あり)内で完結し、損益通算や繰越控除を行わない場合には、原則として申告は不要です。

源泉徴収なしの口座やFX取引では年間の損益を自分で計算し、所得税・住民税を自己申告で納付する必要があります。FXの利益は申告分離課税の対象であるため、利益の金額にかかわらず、原則として確定申告が求められます。

損失を翌年以降に繰り越したい場合や他の取引と損益通算を行いたい場合も確定申告が必須です。また、申告にかかる手数料や会計ソフトの利用料などは、すべて自己負担になる点にも注意が必要です。

自分の取引スタイルや利益の規模に応じて、「自動処理による安心感を優先するか」「自分でコントロールする柔軟性を選ぶか」を判断しましょう。国税庁や業者の公式サイトで最新の制度情報を確認することも、有効な対策の一つです。

 

確定申告が必要か迷う人は、制度に合った対応を

「確定申告が必要かどうかわからない」「手続きが複雑そう」と感じて申告を後回しにしてしまうと、翌年以降に住民税の未納や追加課税が発生し、ペナルティを受けるおそれがあります。株式で源泉徴収ありの口座を選んでいても、損失の繰越控除や医療費控除、ふるさと納税などを利用する場合は確定申告が必要です。

FX取引については、制度上すべての人が原則として申告対象となっており、自分の取引状況に応じた判断が求められます。不安がある場合は、国税庁のWebサイトや会計ソフトを活用して必要な情報を確認したり、公式サイトのサポートページやFAQを参照するのも有効です。

確定申告の時期には、会計ソフト会社や税理士事務所によるキャンペーンが行われることもあり、無料の相談会が開催されるケースもあります。まずは自身の状況を正しく把握し、制度に沿った適切な方法を選ぶことが安心・確実な納税への第一歩です。