相場の転換点を判断し、取引のタイミングを見極めるため、各種チャートにラインを引いて分析することは、FXトレーダーにとって基本中の基本となります。
ライントレード手法とは、チャート上にラインを引くことで、新規注文・決済などの取引タイミングを判断する手法です。そのラインが基準となり、相場の値動きの予測、上昇・下降トレンドの転換点を認知することができます。この手法のメリットは、シンプルで分かりやすく、初心者でも使いやすい点にあります。トレンドラインを活用することで、各種のチャートや相場を把握しやすくなり、取引のタイミングを見逃すことがなくなります。
株価やFX取引上の通貨ペアの値動きは無秩序な動きに見えますが、ある一定期間、一定の角度を保って一方向に進む習性があります。そのためトレンドラインを引くことにより、値動きの行方を確認できるのです。ラインは、値動きの転換点や方向性を把握するのに役立ち、新規注文や決済注文のタイミングを判断する貴重な材料になります。
また、トレンドラインは、相場の値動きがそのラインを超えないと予測される抵抗線や支持線として機能します。トレンドの転換点では、ラインに近づくと反転または突破するので、いち早くその傾向をキャッチすることが取引成功の鍵となります。
FX取引において、マーケット分析の第一歩となるのはチャートを読むことです。数あるチャートの中でもローソク足チャートが一般的に広く利用されています。ローソク足チャートは、一定期間の始値、終値、高値、安値の4つの価格情報を一本のローソクのような形状で視覚的に表現するものです。
相場には、大きく分けて上昇トレンド、下降トレンド、レンジ相場(横ばい)の3つの種類があります。ローソク足チャートを用いることで、相場の動きの勢いや方針を視覚的に把握することができ、売買のタイミングを判断する材料となります。
ローソク足チャートよりもシンプルなバーチャート、終値だけを線でつないだシンプルなラインチャート、「平均足」という独自の計算を用いてトレンドの持続を強調する平均足チャート、価格変動だけに注目し時間の概念を排除したポイント&フィギュアチャート、取引回数ごとに足を描写したティックチャート、一定の値幅が動いたら新しい足が描かれるレンジバー、価格の上昇または下降の転換で線が描かれるカギ足等、用途に応じたチャートがあります。まずはローソク足チャートを使えるようになることを目標としましょう。
FX取引における各種チャート分析のためのラインは3種類あり、その特徴と役割を説明します。
トレンドラインは、各種の相場チャート上の高値、安値のそれぞれの点を線で結んで、斜めに引いていきます。相場の方向性や値幅を視覚的に捉えるための補助線の役目を果たします。
下落した価格が上昇に転じる機会を探すには、安値ポイントを2点以上結び、上昇トレンドラインを引きます。この線は「サポートライン(下値支持線)」と呼ばれ、下落時に反発するポイントとして認知されています。
逆に、上昇した価格が下落に転じる機会を探すには、高値ポイントを2点以上結び、下降トレンドラインを引きます。この線は「レジスタンスライン(上値抵抗線)」と呼ばれ、上昇時に反落するポイントとして認知されています。
ローソク足チャートでは、実体かヒゲ先にラインを引きます。どちらに引くのかという点について正解はないため、両方の位置に引いてみて、実際の価格変動に合うラインを選択します。高値や安値の位置が分かりやすいことから、初心者の方は第一にヒゲ先にラインを引いてみるとよいでしょう。
チャート上に水平に引かれたラインを水平ラインといいます。過去に価格が反発、または反落した重要な局面や、レンジ相場の上下限などに引くのが一般的です。
サポートライン(下値支持線)は、価格がこれ以上下落しないと予測される水準で、相場を支えている線です。逆に、レジスタンスライン(上値抵抗線)は、価格がこれ以上上昇しないと予測される水準で、相場の上値を示します。
また、水平ラインは、レンジ相場での「上値と下値の目安」の線です。水平ラインの突破を新たなトレンドの発生とみなし、売買の意思決定につなげることができます。
ローソク足チャートの高値または安値を結んだラインで、上下に2本の平行線をチャネルラインといいます。
サポートラインの安値に沿って平行にラインを引くと、上昇局面のチャネルラインとなり、レジスタンスラインの高値に沿ってラインを引けば、下降局面のチャネルラインとなります。
チャネルラインは、相場の値動きの大きさ(幅)を視覚的に把握することができ、ライン間の値幅が広ければ広いほど、強いトレンドとして表現されます。基本的に、このチャネルの範囲内での値幅の推移が中心といえるのです。相場がチャネルラインを超えようとしているということは、上昇あるいは下降に向かっているため、新しいトレンドへの転換を示していると判断してよいでしょう。
ラインはエントリーや決済のタイミングを見極めるための目安となります。
複数の安値を結んだサポートラインは、相場の下落局面で価格がそのラインに近づくと、反転して上昇します。この時点を買いのタイミング(押し目買い)と判断し、エントリーにつなげられます。ここで反発せずサポートラインを下回れば、損切りタイミングと捉えられます。
複数の高値を結んだレジスタンスラインは、相場の上昇から下降する局面を捉えます。つまり、上昇続きであってもレジスタンスライン付近で頭打ちとなり、下落に転じた場合は、売りのタイミングと考えられます。
レンジ相場(横ばいトレンド)では、どの範囲で価格が推移しているのか把握するため、サポートラインとレジスタンスラインを2本引きます。
サポートラインに触れて反発したら買い、レジスタンスラインに触れて返されたら売りのタイミングです。これらのラインを突破した場合、上昇か、下降か、いずれかの新しい値動きとなる可能性があるため、新規の注文ポイントとする判断材料になり得るのです。
ロールリバーサルとは、一度役割を果たしたラインが、突破後にサポートとレジスタンスの役割を逆転する現象を指します。例えば、上昇を止めていたレジスタンスラインを価格が上回るや否や、そのラインは価格が下落した際のサポートラインとして機能し始めることがあります。この現象を意識することで、トレンド転換後のエントリーポイントを見つけ、活用することができます。
トレンドラインは相場状況の分析に活用できますが、決して万能ではありません。
「だまし」とは、テクニカル分析における指標が買いサインや売りサインなどのシグナルを発したものの、反対の動きをすることを指します。ラインを一時的に上抜けまたは下抜けした後に、すぐに元のトレンドに戻ることは多々あります。だましによる大きな損失を回避するため、少額エントリーで値動きを見たり、損切りラインを設定したりすることが重要です。
また、ラインを引きたいために、本来引かないような形状でも無理にラインを引いてしまうと、そのラインは大多数の投資家に見られていないため、あまり効果がありません。無理に引くくらいであれば、ラインを引かないという選択も大切です。信頼性の高いラインは、反発回数が多いなど、多くの投資家が意識するポイントで見極められます。
移動平均線、MACD(Moving Average Convergence Divergence)、RSI(Relative Strength Index)など、他のテクニカル指標を組み合わせて判断材料を増やすことで、より信頼性の高い分析が可能になります。
FX取引において、スプレッド(実質的な取引コスト(≒手数料))とラインは異なる要素です。しかし、実際の売買、注文の約定、損切り・利益確定の設定などの実戦においては、スプレッドを考慮しないと意図と違うトレードになることがあります。
例えば、スプレッドが広い場合、実際の約定価格とチャート上のラインは微妙なズレが生じます。また、スキャルピングやデイトレードといった細かい値幅を狙う取引では、スプレッドの影響は大きくなります。ラインを抜けたと思ってエントリーしても、スプレッド差で実際まだ突破していないケースも見られます。
対策として、ライン引きはチャート上でしっかり行い、実際の取引時にはスプレッド分の余裕をもっておくこと、また、スプレッドの狭いFX会社や時間帯を選ぶことが有効です。
どんなにテクニカル分析が上手くいっていても、経済指標や要人発言などのファンダメンタルズ分析がきっかけで、相場の形成が一気に逆転してしまうことがあります。例えば、米国の雇用統計の結果が悪かった場合や、日銀が利上げを示唆するような発言をした場合など、ラインだけを意識していると、これらの重要な発表時に大きな損失が出てしまう可能性があるため注意が必要です。市場のボラティリティが高くなる経済指標発表の前後や重要ニュース報道時は、トレンドラインが機能しないリスクがあるため、FX取引に慣れていない人は、市場が落ち着いてから取引を再開することも検討しましょう。
日ごろから経済指標カレンダー(雇用統計、政策金利発表、GDP)など、為替相場に影響の与える指標が発表される日程を意識しておくことも大切です。
ライントレードは効果的な手法ですが、信用しすぎてしまうと、間違った取引を繰り返す可能性があるため、相場と合わない場合は一旦撤退することも視野に入れましょう。
また、相場はライン付近で必ず反発するとは限りません。反発せずにラインを無視して価格が上昇・下落することもあります。トレンドラインだけでなく、他のテクニカル指標や経済指標、市場のニュースなども考慮した総合的な判断が極めて重要です。
トレンドラインをより正確に引くための実践的なテクニックをいくつかご紹介します。
トレンドラインは、自身のトレードスタイルに合った時間足で引くことが大切です。デイトレーダーなら1時間足や15分足、スキャルピングなら5分足や1分足など、トレードスタイルに合わせてチャートを選びます。 しかし、より信頼性の高いラインを引くためには、複数の時間足でラインを確認することが重要です。異なる時間足で同じようなラインが引ける場合、そのラインの信頼性は高まります。引いたラインが正しいかどうか、複数のチャートを一覧にして観察し、トレンドライン付近で反発・反落しているか確認することで確かな判断を行うことができます。
FX会社が提供するチャート分析ツールには、トレンドライン描画機能が搭載されています。ラインだけでなく図形も描画でき、Webブラウザにログインすれば手軽に使えるものもあります。PCはもちろんスマホのアプリ版でもトレンドラインを自由に引くことができる機能などの利便性をアピールしているFX会社もあります。
多くの国内FX会社がMT4(MetaTrader4)または、MT5(MetaTrader5)というチャート分析ツールを無料で提供しています。これらは世界中のトレーダーに広く利用されており、豊富な描画ツールが標準装備されています。MT4はFX取引に特化しており、シンプルでわかりやすく初心者に適しています。MT5はFXだけでなく、株式、金などの商品先物、株価指数といった多様な資産に対応し、より高度な分析や自動売買を求める場合に適しています。
FX会社の口座を開設する前に、必ず登録番号や認可番号としての「号」を確認しましょう。国内のFX会社は、自主規制団体である金融先物取引業協会への加入が義務付けられており、投資者への啓蒙活動を実施しています。初心者から上級者向けまで、幅広い金融取引の知識を得られるセミナーがオンラインや各地で開催されています。また、専用アプリや各種分析ツール利用による優遇キャンペーンなどもありますので、情報収集しておくとよいでしょう。
FX会社からの提供以外にも利用可能なツールとして、TradingViewが挙げられます。TradingViewは優れた描画機能を持つチャートツールで、トレンドラインや平行チャネルなどを簡単に引くことができます。デザインが美しく、直感的な操作、SNS機能でほかのユーザーの分析も閲覧することができます。パソコンはもちろん、スマートフォンの対応も可能であり、多くのFX会社が自社の取引ツールにTradingViewを提供しています。無料でも十分な機能を利用できますが、Essential、Plus、Premiumなどの有料プランもあります。
最新のMT5は、MetaQuotes社の公式サイトから無料でダウンロードすることができます。デモアカウントを開設することで、実際に取引を行わなくても、すべての機能を体感しながら本格的な分析を学ぶことができます。
これらのツールを積極的に活用し、何度も練習することで、より信頼性の高いラインを引く感覚を養うことができます。
FXにおけるラインの引き方は、チャート分析の基本であり、相場の方向性や転換点、売買タイミングを判断する上で重要な手法です。
トレンドラインは、上昇トレンドでは安値同士を結ぶサポートライン、下降トレンドでは高値同士を結ぶレジスタンスラインとして、ラインを引きます。
水平ラインを重要な価格帯に引くことで、レンジ相場の上限・下限を見極めることができます。
チャネルラインとして、トレンドラインと平行にもう1本引くことで、相場の値動きの幅を視覚的に把握し、売買判断に役立てることができます。
取引相場を見て売買の判断を行うには、ラインの習得が重要なポイントとなります。初心者はまず、実際にラインを引くことから始めましょう。 ラインは無理に長く引かずに、明確なポイントに絞って引くことをお勧めします。チャート分析ツールを使いこなすことも効果的です。練習を積み重ねることが、安定してFXで利益を出し、損失の拡大を防ぐことにつながります。ただし、ラインは決して万能ではないため、過信は禁物です。「だまし」の発生や、経済指標・要人発言といったファンダメンタルズ要因による影響を受けることがあります。他のテクニカル指標や経済情勢などを組み合わせた総合的な判断が、FX戦略の要となります。