FX取引において、自身の「勝ち負け」を把握するためには損益計算が欠かせません。資金管理やリスク管理、納税の面でも身を守るために大変重要です。
FX取引で継続的に利益を出すためには、損益計算の必要性を理解し、その方法を習得することが大切です。FXのようなデリバティブ商品は、レバレッジを活用することで手持ちの資金以上の大きな金額を取引することが可能です。
「買い」「売り」のポジションはもちろん、どの程度の値動きで利益が出るのか、あるいは損失となるのかを理解しておくことで、納税の準備と将来のリスク管理につながります。
FX取引ではレバレッジを効かせた取引が可能であり、高いレバレッジは大きな利益を期待できる一方で、損失も大きくなるリスクを伴います。そのため、為替レートの変動とともに発生する損益を正確に把握しなければなりません。
適切な損益計算は、過剰な取引を抑制する効果があり、将来のリスク管理としての側面も担います。具体的には、安易な取引の抑止や、損切りの実行タイミング予測に役立ちます。
FX取引における事実上の手数料がスプレッド(買値と売値の差額)です。小さな値幅を頻繁に狙う取引では、スプレッドが大きいと利益を得にくくなるため要注意です。通貨ペアやFX会社によってスプレッドは異なるため、各社の差額を比較検討することをおすすめします。
FX取引では、世界中の2つの通貨を交換(売買)します。取引で発生する損益は、「為替レートの変動に伴う損益」「二国間の金利差分調整によるスワップポイント損益」の2種類です。最終的なFXの損益は、これら二つの損益を合算したものです。
為替レートの変動に伴う損益とは、通貨の交換レートが変わることによって発生する損益を指します。つまり、購入した価格と売却した価格の差によって利益または損失が発生します。
この損益は、全ての取引に関わります。特にとても短い時間で売買を繰り返すスキャルピングや、翌営業日にポジションを持ち越さないデイトレードといった取引回数の多い場合に大きく影響します。
二国間の通貨同士の「金利差」に着目し、金利の高い通貨を持っていると受け取れる利益のことをスワップポイントと言います。逆に、金利の高い通貨を売って金利の安い通貨を買う場合は、スワップポイントを支払うことになります。ポジションを翌営業日へ持ち越すスイングトレードやポジショントレードにおいては、このスワップポイント損益が全体の損益に大きく影響します。
スワップポイントの受払いは日々発生し、原則として全て課税対象となります。このスワップポイント収益を期待して、エマージング通貨(トルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドなどの新興国通貨)は人気があります。
日本の金利は低い水準であるため、これらの通貨との金利差調整が大きくなることで、より大きなスワップポイント収益が期待されます。
FXの損益計算は、基本的に「(決済価格-注文価格)×取引数量」で求められます。より具体的に計算する際には、取引数量(ロット)と獲得値幅(pips)が基準となります。
pipsとは「Percentage In Point」の略称で、通貨ペアのレートの変動を測定する際に使用される単位です。異なる通貨ペアでも「何pip取れた(損した)」と数字で簡単に比較することができます。
日本円ベースの取引における損益は、「獲得したpips数(1pips=0.01円)×取引数量」で計算されます。 例えば、米ドル/円を160.000円で1ロット(10,000通貨)を新規に買い、160.010円で売り決済したとしましょう。
この場合、獲得値幅は160.010円から160.000円を引いた0.010円、つまり1.0 pipsとなります。計算式に当てはめると、10,000(1ロット)×0.01(1pips)で100円の利益となります。もしこれが10ロット(100,000通貨)の取引であれば、100,000×0.01で1,000円の利益です。
外貨ベースの取引における損益は、「獲得したpips数(1pips=0.0001ドルなど)×取引数量×円換算レート」で計算されます。 例えば、ユーロ/米ドルを1.06000ドルで1ロット(10,000通貨)新規に買い、1.06010ドルで売り決済した場合を考えてみましょう。
この場合の獲得値幅は、1.06010ドルから1.06000ドルを引いた0.00010ドル、つまり1.0 pipsとなります。このままではドル建ての利益となるため、日本円に換算する必要があります。もし決済時の米ドル/円レートが150円だと仮定すると、1ロット(10,000通貨)では、10,000 × 0.0001で1ドルの利益、これを円換算すると、1ドル × 150円 = 150円の利益となります。
外貨ペアの場合は、必ず決済時の為替レートを使用して正確に日本円に換算することが重要です。
まず、取引する通貨の小数点以下何桁がpips単位なのかを正確に把握します。「ロット:取引数量」は損益に大きく影響するため、注文前に必ず確認しましょう。特に、外貨の通貨ペアで取引した場合は、決済時の為替レートを使用して正確に円換算を行うことが重要です。
FXの利益計算は「(決済価格-注文価格)×取引数量(ロット)」が基本です。例えば、米ドル/円を160.000円で買い、160.025円で売った(決済した)場合、2.5pipsの利益となります。
また、1万ドルの取引で、米ドル/円が160.00円から160.10円と10銭上昇すると、1,000円の利益が生まれます。FXの強みであるレバレッジ効果により、少ない証拠金でこの1,000円の利益を得る取引が可能となるため、適切に利益計算を行い、過剰な取引を抑制することが重要です。
FXの損益計算や管理を手間なく正確に行うために、便利なツールや管理表を活用することをおすすめします。FX口座を開設すると、取引履歴を確認できるツールが提供され、その履歴には約定価格や決済価格、取引数量、スワップポイントなどが含まれるため、年間の合計損益の自動計算が可能となります。
より細かく損益を管理したい場合は、FX会社からダウンロードした取引履歴データを基に、Excelなどの表計算ソフトを使って独自の管理表を作成することも可能です。自分が見やすいようにレイアウトを改良し、計算式の設定などを行うことで、過去の取引を分析し、将来の戦略に活かすことができます。
また、スマートフォン向けの損益計算アプリも便利です。取引数量や為替レートを入力するだけで、簡単に損益を計算でき、外出先でもスマホで手軽に利用することができます。FX会社によっては、スマホアプリや取引ツールの利便性を活かしたキャンペーンや、アプリ経由の口座開設や取引を行うことでキャッシュバックされるケースもあります。
FX会社による取引シミュレーターや計算ツールは、取引情報と連携されるため、計算ミスを防ぎ、リスク管理や取引計画を立てる上で大変役立ちます。また、想定される取引における損益や必要証拠金、ロスカットレートなどを事前に計算することが可能です。
例えば、入金額や取引数量からロスカット発動レートやレバレッジ、決済レート損益などをシミュレーションすることができます。ただし、一部のシミュレーターでは対円以外の通貨ペアや両建て、複数通貨ペアの取引、スワップポイントの計算は含まれない場合があるため、計算結果を確認しましょう。
FX取引で得た利益は所得となりますので、原則として税金がかかります。
FX取引による所得は、所得税法上「雑所得」に区分されます。株式投資などで利用される特定口座のような源泉徴収の仕組みはFX取引には原則ありませんから、ご自身で年間損益を計算し、必要に応じて確定申告を行う必要があります。
給与所得者がFX取引等の雑所得の合計額が年間20万円を超えた場合、確定申告が必要となります。専業主婦や学生など、給与収入がない場合、FXの利益が年間48万円を超える場合に確定申告が必要となります。この48万円は「基礎控除」に相当し、それを超える雑所得がある場合は納税義務が生じます。
また、年収が2,000万円を超える給与所得者や、給与以外の所得がある方など、個々の状況によって確定申告の要否は異なるため、ご自身の状況が当てはまるか不明な場合は、税務署や税理士に相談することが大切です。
FX取引による所得にかかる税金は、以下の計算式で求められます。
FX取引による所得 × 税率20.315%
「FX取引による所得」とは、以下の要素から構成されます。
(FX取引時の為替レート変動に伴う損益) + (累計スワップ) - (FX取引の直接的な必要経費)
為替レートの変動による損益(為替差益)と、ポジションの保有によって発生する累計スワップポイントの合計から、FX取引の直接的な必要経費(シミュレーション等のツール利用料、情報収集のための書籍代、パソコン・スマートフォンの購入費用、その他必要経費として認められるもの)を差し引いたものが、税金計算の基となる所得額となります。
FX取引で発生した損益は、「先物取引に係る雑所得等」に分類される他の金融商品(例えば、くりっく365、くりっく株365、暗号資産(仮想通貨)のデリバティブ取引など)との間で損益通算つまり利益を相殺することが可能です。これを損益通算と呼び、税負担を軽減する有効な手段です。
損益通算とは、複数の「先物取引に係る雑所得等」に分類される取引で発生した利益と損失を合算することを指します。例えば、FXで利益が出たものの、暗号資産のデリバティブ取引で損失した場合、その損失をFXの利益から差し引いた税額となるため、全体の税負担を軽減できる場合があります。
また、損失が出た年度については、確定申告をすることにより損失を繰り越すこともできます。
FX取引で損失が出てしまう年もあるかもしれません。確定申告を行うことで、「損失繰越控除」という制度を活用できるというメリットをご紹介します。
FX取引で損失が出た場合、その年のうちに確定申告を行えば、翌年以降3年間にわたって、その損失を利益から差し引くこと(損失繰越控除)が可能です。これにより、翌年以降に利益が出た際の課税額を軽減することができます。
例えば、2024年に50万円の損失が出た場合、2025年に60万円の利益が出れば、50万円分を差し引いた10万円に対してのみ課税されます。
ただし、損失の繰越控除を利用するには、損失が出た年から毎年欠かさず確定申告を行う必要があるため、注意が必要です。
FXの確定申告に関して、初心者の方からよく寄せられる疑問があります。
「FXの利益が20万円以下なら確定申告は不要なのか?」という疑問に対しては、給与所得者の場合、FX取引による所得を含めた雑所得の合計額が年間20万円以下であれば、原則として確定申告は不要とされています。
ただし、これはあくまで給与所得者のケースであり、年収が2,000万円を超える方や、給与以外の所得がある方など、個々の状況によって異なります。ご自身の正確な申告要否については、必ず税務署や税理士に確認することが大切です。
また、「FX取引を行う際の必要経費で認められるものは?」という疑問については、FX取引を行うために直接必要となった費用は、必要経費として所得から差し引くことができる場合があります。
具体的には、FX取引関連の書籍代やセミナーへの参加費、取引に使用するパソコンやスマートフォンの購入費用(取引に使用する割合に応じた按分が必要な場合あり)、通信費、取引ツール利用料などが考えられますが、何が経費として認められるかの判断は個別の状況や税法の解釈によります。不明な点は税務署や税理士に相談してください。
このようにFX取引で損益計算を正確に行うことは、ご自身を守ることにつながります。利益や損失の出方を理解し、「想定外の大損」を防ぐことが大切です
「年間の損益はどうやって確認するの?」という疑問には、FX会社により発行される年間取引報告書には、為替差損益やスワップポイント損益などがまとめられているため、簡単に年間の損益を確認できます。取引履歴をダウンロードして自分で集計することも可能ですが、確定申告の時期が近づいたら、早めに年間取引報告書を確認しましょう。
これらの疑問以外にも、個別の状況に応じた注意点があるため、ご自身の取引状況や所得状況に合わせて、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。
FX取引の損益計算を正確に行うことは、ご自身の身を守ることになります。基本的なFX用語と計算方法は、ここでマスターしておきましょう。
FX取引は、レバレッジを効かせて取引が可能なデリバティブ商品であり、大きな利益が期待できる反面、損失も大きくなるリスクを伴います。FX取引で発生する損益は、為替レートの変動に伴う損益と、金利差調整によるスワップポイント損益の2種類で構成されています。
為替レート変動に伴う損益は、売却(決済)時の為替レートと購入(新規)時の為替レートの差(獲得値幅)を「取引数量(ロット)」と「獲得値幅(pips)」で計算します。スワップポイントは、金利の高い通貨を買い、金利の低い通貨を売ることで支払われる金利差調整分です。
FX取引で利益を計上した場合は税金がかかり、その所得は雑所得に分類されます。雑所得が年間20万円を超えた場合には、確定申告が必要となります。税金計算の基本的な計算式は、「FX所得 × 税率20.315%」であり、FX取引による所得は、「為替レート変動損益+累計スワップ-FX関連の直接的な必要経費」で算出されます。
さらに、他の「先物取引に係る雑所得等」の損益との通算が可能であり、損失が出た年度については、最長3年間損失を繰り越すことができる「損失繰越控除」の制度も活用できます。
FXで発生する損益の種類や利益の計算方法を把握しておくことは、安易な取引の防止とともに適切なタイミングで損切りしやすくなります。また、年間の損益を正確に計算することで納税額を確認する際にも必要となり、利益計算の方法に関して理解を深めることは、FX取引におけるリスク管理と取引戦略にとても大いに役立ちます。